2015年3月17日。26年連れ添った妻と子供たちが出て行った。

しかも完全失業中。失業保険もなく、ほとんど貯えもない。

つい数年前にはフォレスト出版から念願だった出版もし、FedExでもシステムエンジニア兼ロジスティクスコンサルタントとして大活躍していたのが、いつの間にか人生最大のピンチになってしまった。

そもそも失敗のキッカケは学習塾の経営に失敗したことだ。2012年の12月末に15年勤めたFedExを退社し、退職金を使って、学習塾を始めた。

夢の実現を引き寄せる最短ルート

FedExの仕事は、最初はエキサイティングだった。1998年に入社したころは、まだ日本では有名でなく、大手企業からの注文はほとんどなかった。その状態から、いくつものBig Projectを成功させ、売り上げを伸ばし、IT部門からはほとんど受賞できないと言われた社長表彰も受賞し、ハワイ旅行の褒美ももらった。しかし、大手得意先だった電機メーカーが韓国に押され出し、日本からの輸出そのものが減ってくると、私の得意としていた大型プロジェクトがどんどん無くなっていった。ルーティンワークばかりの仕事となってしまった。

それでも、考えようによっては、給料は高水準で、仕事も楽だったから、いい職場だったのかもしれない。若い頃、仕事が忙しく、給料もそれほど良くなかったときは「給料が良くて、仕事が楽な仕事はないかなー」と思っていたのだから、ある意味、自分の望みが完全に実現していたわけだ。

しかし、退屈で仕方がなくなってしまった。それに、元々、各種勉強法や能力開発法・自己啓発に興味があり、サラリーマンの能力開発法についての本も出版したくらいだから、それらの知識や経験を活かしたくてしかたがなくなった。

最初は、個人向けのサラリーマン能力開発コンサルタントとして独立したかったのだが、そういった需要があるのかどうかよく分からない。マーケティングも勉強したのだが、集客の仕方もよく分からない。

そんな時に考えたのが、今まで私がコンサルタントとして培った能力を中学生向けに活用できないかということだ。

子供たちの勉強方法を見ても、私の子供時代と比べて進歩している様子がまるでない。むしろ、ゆとり教育の影響で昔よりも効率が悪くなっているようだった。これだけ社会が進歩しているのに勉強効率に全く進歩が見られないのはおかしい。例えば、ノートを取るにしてもマインドマップでノートを取ったほうが、効率が良いという研究結果があるが、マインドマップでノートを取っている塾や学校は、ほぼ存在しない。

勉強の前に5分間程度音読をすると脳が活性化し短期記憶が20%以上向上するという研究結果があるが、授業に取り入れているところは、ほぼ存在しない。

適切なタイミングで復習すれば、記憶の定着度が2倍以上になるということが100年以上前からわかっているが、これを授業に取り入れているところは、ほぼ存在しない。

プロジェクトマネジメントの考え方を取り入れれば、志望校に入れる確率が大幅に上昇するはずであるが、プロジェクトマネジメントを学習計画の立案に取り入れているところは、ほぼ存在しない。

だから、これらを採用すれば、かなりの短期間で成績を急上昇させられると考えた。そして、それが成功すれば、勉強嫌いの子供でも勉強が好きになるだろうと考えた。有名塾の先生にも、この考え方を説明した。そして、絶賛された。マーケティングもしっかり勉強したつもりだった。

しかし、実際、開業してみるとチラシを何度まいてもほとんど反応なし。体験授業に来ても、入塾率は非常に低かった。

恐らく外資系でコンサルタントとして永年働いてきた私は、お高くとまっているような雰囲気があったのだろう。もっとフレンドリーに、あるいは、泥臭くやる必要があったのだろう。

とにかく開業してから半年程度しかもたなかった。その後、サラリーマンに戻ろうとしたのだが、さっぱりうまくいかない。正社員として再就職のチャンスも2回ほどあった。

しかし、いずれも、不思議としかいいようのない不可抗力が発生。特に、最後に内定取り消しになったのは厳しかった。

2014年の12月に面接があり、手ごたえは万全だった。オーストラリア人の社長からは、「君にベストのポジションを用意するから、ぜひ取締役候補として来てくれ」と言われた。ただ、ひとつ不思議だったのは、なぜか面接の翌日にその会社の唯一の取引先で食品異物混入事件が発生したことだ。誰もが知っているあのM社だ。

しかし、消費者が体調をくずしたわけでもなく、消費期限や産地を偽装したわけでもない。すぐに、ニュースは立ち消えになると思っていた。しかし、その他に大きなニュースがなかったのか、あれよ、あれよという間に報道頻度が高くなっていった。読売TVの人気ニュースキャスター辛抱氏も「ちょっとマスコミが騒ぎすぎだよな」と言っていたくらいだから、一週間もすれば、ニュースは下火になると思っていた。しかし、どんどん騒ぎは大きくなり、1月のM社の売り上げは前年比38%以上ダウンという過去最悪の信じられない結果となった。

結局、この影響で私が受験していた会社でも予算カット。私の採用に関しては、オーストラリア人の社長からアメリカの親会社に特例申請を出してもらったということだがそれも却下。結局、不採用となってしまった。ほとんど受かったつもりでいたため大ショック。恐らくもう一か月前に面接を受けていれば採用となっていたと思う。

そして、長年連れ添った妻とも離婚。長女を除く家族と犬も家を出て行ってしまった。

しかし、一方、「ザ・シークレット」にも出演しているジョン・F・ディマティーニ博士によれば、「世界はバランスでできている」と言う。

そもそも、この世界にはネガティブな出来事も、純粋にポジティブな出来事というのも存在せず、ただ出来事があるだけだと。私たちが出来事を解釈してラベルを貼るまで、すべての出来事はニュートラルだという。そして、私たちがポジティブな意味づけを与えてやれば、やがて、ポジティブな出来事が起こってくるということだ。

日本でも多くの先人や賢人たちが「逆境こそが人生にとって最大のチャンスだ」と言う。

もし、それが本当なら、完全失業し、離婚したことも、私の成長にとって必要なことなのだろう。そして、これは、人生最大のピンチではなく、人生最大のチャンスだ。最初の私の本のタイトルは「人生をリセットする150時間勉強法」というものだが、さて、もう一度、人生をリセットしよう。

カチッ。

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